レトロスペクティブ実践ガイド
レトロスペクティブ(振り返り)は、スクラムの重要なイベントの一つです。 チームが定期的に立ち止まり、何がうまくいったか、何を改善できるかを議論し、 継続的な改善を実現します。このガイドでは、様々なフレームワークと 効果的なファシリテーション方法を紹介します。
推奨時間: 45-90分
頻度: スプリント毎
レトロスペクティブフレームワーク
KPT(Keep / Problem / Try)
45-60分
最もシンプルで広く使われているフレームワーク。日本のチームで特に人気があります。
Keep
続けるべき良かったこと
Problem
問題点や改善が必要なこと
Try
次に試してみたいこと
進め方:
1. まず5-10分で各自が付箋にKeep/Problem/Tryを書き出す
2. ボードに貼り出し、似た内容をグループ化
3. 重要度の高い項目についてドット投票
4. 上位項目について具体的なアクションを決定
💡 Tip: ProblemはTryにつながる形で議論すると建設的になります。
Start / Stop / Continue
30-45分
行動の変化にフォーカスしたシンプルなフレームワーク。新しい取り組みを促進したいチームに最適。
Start
新しく始めるべきこと
Stop
やめるべきこと
Continue
続けるべきこと
進め方:
1. 各カテゴリごとにブレインストーミング
2. 特にStartとStopに焦点を当てて議論
3. 実行可能なアクションアイテムを決定
4. 担当者と期限を明確化
💡 Tip: Stopは批判ではなく改善の機会として扱います。
4Ls(Liked / Learned / Lacked / Longed for)
45-60分
感情と学びにフォーカスしたフレームワーク。チームの成長と感情的なケアを重視。
Liked
良かったこと、楽しかったこと
Learned
学んだこと、新しい発見
Lacked
不足していたこと
Longed for
欲しかったもの、望んでいたこと
進め方:
1. 各Lについて個人で振り返り
2. チームで共有し、共感や補足を行う
3. Lacked/Longed forから改善アクションを導出
4. Liked/Learnedを称え、チームの成功を祝う
💡 Tip: Likedから始めることでポジティブな雰囲気を作ります。
Mad / Sad / Glad
30-45分
感情ベースのフレームワーク。チームの感情状態を把握し、心理的安全性を高めます。
Mad
怒りを感じたこと、frustration
Sad
残念に思ったこと、失望
Glad
嬉しかったこと、満足
進め方:
1. 匿名投稿モードの使用を推奨
2. 感情を否定せず、すべて受け入れる
3. 特にMad/Sadの根本原因を探る
4. Gladを増やすための施策を考える
💡 Tip: 批判ではなく感情を共有する場として設計します。
Sailboat(帆船)
45-60分
ビジュアル重視のフレームワーク。目標への推進力と障害を視覚的に整理します。
Wind(風)
チームを前進させる力
Anchor(アンカー)
チームを引き留める障害
Rocks(岩礁)
今後のリスクや懸念
Island(島)
目指すゴール
進め方:
1. 帆船の図を描いてビジュアル化
2. 各要素について付箋を貼る
3. Anchorを取り除く方法を議論
4. Rocksを回避するための計画を立てる
💡 Tip: チームの現在地と目標を視覚的に共有できます。
レトロスペクティブの進め方
5分
チェックイン
参加者の状態を確認し、安全な場を作ります。
一言ずつ今の気持ちを共有
グラウンドルールの確認
前回のアクションアイテムの確認
10-15分
データ収集
スプリント中の出来事を振り返り、付箋に書き出します。
個人で黙々と付箋を書く
事実と感情の両方を記録
できるだけ具体的に
15-20分
共有とグループ化
付箋を共有し、似たものをグループ化します。
一人ずつ付箋を読み上げ
質問やコメントで理解を深める
テーマごとにクラスタリング
5分
投票と優先順位付け
ドット投票で重要なトピックを選びます。
各自3-5票を持つ
最も議論したいテーマに投票
上位3-5項目を選出
15-20分
議論とアクション決定
選ばれたトピックについて深く議論し、アクションを決定します。
根本原因の分析
具体的なアクションの決定
担当者と期限の設定
5分
クロージング
レトロ自体の振り返りと感謝を共有します。
アクションアイテムの確認
レトロの進め方へのフィードバック
感謝の共有
ファシリテーションのコツ
心理的安全性を確保する
批判ではなく改善にフォーカス。発言を否定しない。必要に応じて匿名モードを使用。
タイムボックスを守る
各フェーズに時間制限を設け、タイマーを使用。議論が長引く場合は別途時間を設ける。
全員参加を促す
発言が少ないメンバーにも声をかける。ラウンドロビン形式で順番に発言する機会を作る。
アクションを具体的に
「もっとコミュニケーションを取る」ではなく「毎日15時にSlackで進捗共有」のように具体化。
前回のアクションをフォローアップ
レトロの冒頭で前回決めたアクションの進捗を確認。継続的な改善サイクルを作る。
マンネリを防ぐ
定期的にフレームワークを変更。場所を変える、お菓子を用意するなど工夫を。
よくある質問
スクラムでは各スプリント終了時に実施します。通常は2週間に1回。チームの状況に応じて頻度を調整しても良いですが、最低でも月1回は実施することをお勧めします。
AgileExperienceのようなオンラインツールを使用し、ビデオ会議と併用します。匿名投稿機能を活用することで、対面より率直な意見が出やすくなることもあります。
心理的安全性がまだ十分でないチーム、センシティブなトピックを扱う場合、または新メンバーがいる場合に効果的です。ただし、徐々に匿名なしでも発言できる環境を目指しましょう。
根本原因が解決されていない証拠です。「なぜなぜ分析」で深掘りし、より抜本的な対策を検討します。必要に応じてマネジメントや他チームを巻き込みましょう。
レトロへの参加を必須にする、時間帯を調整する、レトロの価値を説明するなどの対策を。3人以下の場合はカジュアルな対話形式でも良いでしょう。
まずGlad/Liked/Keepなどポジティブな項目から始める。良かったことを先に共有することで、バランスの取れた議論になります。